SAKE CELLAR®は、「マイナス5度」まで温度調整が可能な、日本酒の保存に最適なセラーとして誕生した。日本酒は、わずか1度の差で品質が大きく変わるといわれている。さまざまな蔵元の話を通じて、日本酒の温度管理の重要性に迫っていく。
1615年、山形県村山市で産声を上げた高木酒造。創業400年を超えて今なお、強い意志を持って、伝統を継承し続けているという。
一方で、時代とともに移ろう日本酒の製法や流行に合わせて、その時々で最適な熟成方法や保存方法を模索。現在はマイナス温度での熟成・保存によって、最高峰の日本酒を世の中に送り出している。
高木酒造の主要ブランドとして名高い「十四代」。果実を思わせる豊潤な甘みが特徴で、「幻の日本酒」とも謳われるほど入手困難な銘柄である。しかし、誕生から今に至るまでの歴史は、決して順風満帆なものではなかったようだ。15代目蔵元の髙木顕統氏は、当時の状況を教えてくれた。
「『十四代』が生まれたのは平成6年。その頃は、いわゆる淡麗辛口と言われる、サラリとした飲み口の日本酒がブームでした。もちろん高木酒造でもそれに近い品を製造していましたが、僕自身は、淡麗辛口の日本酒を造ることに、あまり心が動かなかったんです」
言ってみれば、「十四代」は時代の潮流とは異なる味で勝負した日本酒だったのである。なぜ、髙木氏は淡麗辛口の日本酒に惹かれなかったのだろうか?そこには、蔵元の息子として生まれ育った幼少期の体験が深く関わっていた。
「自宅の隣に蔵があったので、毎日蒸し米の甘い香りや、麹・醪の匂いに触れながら育ちました。その感覚から、本来の日本酒の味とはもっと芳醇なもので、旨口であるべきだと感じていたんです」
こうした原体験から、自身が理想とする日本酒を追求する中で生まれた「十四代」。しかし、今でこそ数多の日本酒ファンに支持されているものの、販売当初は鳴かず飛ばずの状態だったという。
「初めの頃は本当に売れなかったんです。でも、ご縁のあった方たちが、1本1本口コミで売ってくれたおかげで、徐々に広がっていって。本当に人に恵まれていたと思います。特に印象に残っているのが、最初に造り上げた『十四代』を東京の老舗酒販店に持っていったときのこと。その方が『髙木くん、よくやった。僕はこういう日本酒を待っていたんだよ』と言ってくださって。本当に嬉しかったことを覚えていますし、学ぶことや、助けてもらうことが多かったですね」
高木酒造は、「聲無きを聞き、像無きを視る。」という社訓を掲げている。
「酒造りの相手となる酵母や麹菌はしゃべりませんが、その時々の状貌や匂い、音、食べたときの甘みや喉ごし……。そういったものを五感で感じ、微生物が何を求めているのかを知り、酒造りに活かせるのが、真のプロフェッショナルだと思います。僕自身も、社員も、早くその境地に達せるように精進する日々です」
そして、社訓と同様に受け継がれてきたのが「伝統を大切にし、次の代に継なぐ、伝える」と強い意志を持って酒造りに励む姿勢だという。
「酒米の出来や気候、経営状態などは毎年違ってきます。長い歴史の中で、当然、良いときもあれば悪いときもありました。でも、なるべく良い状態を残したまま次世代につないでいきたい。その気持ちは僕も変わりません」
しかしそれは、当代の技法やノウハウを、そのまま次世代に継承するという意味ではなかった。「父の代と僕の代でも、造り方や味は全然違っているんです。先代の模倣ではなく、その時代で模索しながら自分自身が納得できる答えを出さなきゃいけない」と髙木氏が語るように、時代とともに変化する技術や製法、人々の好み、飲み方などにも目を向ける必要があるという。
また、造り上げた日本酒がどれほど高評価を得ようとも、「次はもっと美味しくしたいという欲が出るんです」と髙木氏は笑う。
「誰でも同じ味や香りに仕上げられるようにマニュアル化すれば、造る側としてはとてもラクになります。でも、それだと平均的なものは造れても、120点の日本酒は生まれません。大げさな表現になりますが、僕たちは『1つの芸術品を造ろう』という姿勢で、毎年の酒造りに臨んでいます。それに、飲み手は『この人が造っている日本酒だから美味しいんだ』という物語を感じたいもの。だからマニュアル化することは、飲み手にとっては一番イヤなことではないかと思うんです」
「十四代」も、ブランドが誕生した当初は「濃醇な旨さ」だったというが、毎年のように新たな試みを繰り返し、造り方も繊細になり、今では「軽やかな旨さ」という評価に変わっている。
そして、日本酒が繊細になってきているからこそ、より保存方法が重要になってきているのだという。
「日本酒には複雑な成分が含まれていて、米由来なので、当然劣化もします。なので、低温で保存するということが非常に重要になってくるのです。そして同じマイナスでも、マイナス5度とマイナス1度では非常に大きな差があります」
高木酒造では現在、マイナス8度とマイナス6度、2台の保管庫で日本酒を保存している。温度に関する繊細な、そして徹底したこだわりが、「芸術品」を造り、届ける上で不可欠なのだろう。
「家庭用冷蔵庫はマイナス温度にならないので、日本酒の保存場所としては、やはり納得できていませんでした。だからこそ、マイナス5度で保存ができるセラーは、とても画期的だと感じています。光による味の変化や変色を防げるのも高ポイントですね」
近年、日本酒を嗜む、楽しむ人が増えてきている実感があるという髙木氏。だからこそ、飲食店や酒販店も日本酒を適切な環境で保存し、お客さまに提供するということが、今後は非常に重要になってくるという。
「きちんと保存された状態の日本酒を提供したなら、お客さまは『これまで飲んだものとは全然違う』と感じると思います。こうして『日本酒って美味しい』と感じてくれる人が増えれば、蔵元もより良い日本酒を造ろうというモチベーションが上がりますし、その美味しい日本酒をきちんと保存して、またお客さまの口に……という好循環が生まれていくのではないでしょうか」
中田英寿が47都道府県を旅して出会った日本の「わざ」と「こころ」
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それは、“日本人も知らない、日本の本当にいいもの”。
「料理」「日本酒」「旅館」「手みやげ」「工芸」という5つのジャンルで一生に一度は体験したい珠玉の“にほんもの”を収録する。
SAKE CELLAR®は、日本酒の美味しさを最大限に保つために開発された日本酒セラーです。
プレミアムな日本酒の本来の美味しさを保つことができます。